ボサ・ノヴァ

2013年3月29日 (金)

アンディ・ウィリアムズのボサ・ノヴァ

Andysbossanova

僕は高校生のころボサ・ノヴァが好きになり、ジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビン、セルジオ・メンデスなどをポツリポツリ聴いていたのだけれど、その中にアンディ・ウィリアムズが歌う四曲入りのレコードがあった。このレコードはその後いつかの時点で処分したらしく、ずっと手元になかったのだが、先日ネット・オークションで再び手に入れた。懐かしい。

当時人気のあったテレビ番組『アンディ・ウィリアムズ・ショウ』の一部が現在 YouTube にアップロードされていて、この中にアンディがジョビンやマルコス・ヴァーリ、クァルテート・エン・シーらと和気あいあいに共演しているものがある。アンディの歌声はボサ・ノヴァとなかなか相性が良いのだが、残念ながら、彼が LP 一枚単位でボサ・ノヴァを歌ったものはどうも存在しないようだ。

岩切直樹さんのブログ『三月の水』を覗いてみても、ここで紹介されているレコードは日本での編集盤『ボサ・ノバ、ラテンをアンディと』になっている。このレコードについてはたまにネット上で見かけるけれど、題名に示すようにボサ・ノヴァのみを歌っているわけではない。

結局のところ、僕が知り得た範囲内では彼のボサ・ノヴァは今回再び入手した四曲のみであり、この種のレコードではこれ以上の情報を得ることはできそうもない。

というわけでアンディのボサ・ノヴァだけれど、彼の歌い方はいつもどおり折り目正しく、また軽みも感じさせるものだけれど、ブラジル音楽に馴染んだ現在の耳からすると、本国のリズムが求めるものとはやはり異なっている。むずかしいもんですね〜。

でも、いいですね。

Andy Williams / Bossa Nova (CBS / 日本コロムビア)

Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)
Meditation
So Nice (Summer Samba)
How Insensitive

2012年2月23日 (木)

『クァルテート・エン・シー』

Quartetoemcy

クァルテート・エン・シーがエレンコ・レーベルに録音した最初のレコードを聴いています。これは彼女たちの通算三作目に当たるものです。

クァルテート・エン・シーは、僕がボサ・ノヴァを聴き始めた頃、ドリヴァル・カイミと共演したレコードで聴いていました。ところが、ここでの御大カイミの歌は、それまでジョアン・ジルベルトのしなやかな歌声に親しんでいた耳にはあまりに無骨かつ古色蒼然たるもので、早々と手放してしまったのでした。今にして、ジルベルトはあのカイミの作ったサンバをなんと魅力的に歌っていたことかと思いますね。

その後、彼女たちの歌を聴くことはなかったのだけれど、やはり一枚くらいは欲しいなと思って求めたのがこのレコードだというわけです。

これが出たのは 1966 年で、収録曲の中では、ボサ・ノヴァのコンピレーション・アルバムでしばしば見かけるバーデン・パウエル / ヴィニシウス・ジ・モラエス作の『オサーニャの歌』が彼女たちの歌声と対になって記憶されているところ。そのほか、シコ・ブアルキ・ジ・オランダ、アントニオ・カルロス・ジョビン、マルコス・ヴァーリ、オスカル・カストロ・ネヴェス、さらには Ugo Marotta、Sergio Ricardo、C. Castilho、Francis Hime など僕の知らない人たちの曲も入っていて、それぞれに素敵です。

Quarteto em Cy (Elenco)

A Banda
Vamos Pranchar
Espere um Pouco
Canto de Ossanha
Samba Torto
Caminha do Mar
Segredinho
Amaralina
Morrer de Amor
Pedro Pedreiro
Inutil Paisagem
Ate Londres
Ultimo Vanto

Quarteto em Cy
Arranjos de Oscar Castro Neves e Ugo Marotta
℗1966

2009年12月 6日 (日)

ワルター・ワンダレイ『シェガンサ』

Cheganca

ワルター・ワンダレイはワルテル・ワンデルレイなどとも表記されているのですが、ここでは従来からの呼び方で進めることにします。

ワンダレイについて、僕らはジョアン・ジルベルトの三枚目のレコード『ジョアン・ジルベルト』(オデオン、1961)の編曲者として知っているわけですが、リオ・デ・ジャネイロに出る前はサン・パウロでジャズ・ピアニストとして活動していたようです。

ライナー・ノートには、『シェガンサ』はアメリカにおけるワンダレイの三枚目のレコードであると記されています。一枚目は『レイン・フォレスト』、二枚目はアストラッド・ジルベルトと共演した『ジルベルト・アンド・ワンダレイ』です。

僕は高校生のころ、四曲入りのコンパクト盤でワンダレイを聴いていました。収録されていたのは『レイン・フォレスト』から『サマー・サンバ』『オ・グランジ・アモール』、『シェガンサ』から『シェガンサ』『アモール・ジ・ナーダ』。この中ではマルコス・ヴァーリの曲『サマー・サンバ』をよく聴いていましたが、同じ作者の『アモール・ジ・ナーダ』のシンプルな曲想も好きでした。

レコード・タイトルにもなっている『シェガンサ』はエドゥ・ロボの曲で、彼独自のアフロ的な雰囲気がワンダレイの軽やかさとうまくブレンドされています。

レコード全体では、アメリカのスタンダード曲やフランスの映画音楽も取り入れたり、ピアノも交えたりと、今ひとつ焦点が定まらない感じもしますが、オルガン、ドラムス、パーカッションだけの単調さを救うためだったろうと思いますね。

The Walter Wanderley Trio : Chegança (Verve)

Chegança
Amanha
Take Care, My Heart
Agua de Beber
Here's That Rainey Day
O Ganso
Mar Amar
Você e Eu
O Menino Desce o Morro
Dá-Me
Amor de Nada
A Man and a Woman

Walter Wanderley (electric organ)
Bobby Rosengarden (percussion)
Sol Gubin (percussion)

2009年6月21日 (日)

キャノンボール・アダレイとセルジオ・メンデスのフォンタナ盤

Adderleyandmendes キャノンボール・アダレイとセルジオ・メンデスの共演盤については前にいちど記事を載せていたのですが、盤の溝が痛んで雑音がひどいので、新たに買い直しました。

前の盤はキャピトル・レーベルで、ジャケットにはブラジル 66 時代のものと思われるメンデスの写真が使われ、録音とは時代的には前後していたのですが、こちらはフォンタナ・レーベルで、ジャケットは楽器を描いた絵になっています。

曲の配列も大きく変わり、フォンタナ盤には『ジャイヴ・サンバ』が追加されています。この『ジャイヴ・サンバ』は、同時期にアダレイが率いていた六重奏団のセッションによるもので、このためにアルバム全体の統一感は大きく損なわれています。

というわけで、このアルバムについては未だ満足する盤が見つからないのですが、音そのものには問題がないので、しばらくはフォンタナ盤を聴き続けようと思います。

アダレイはアメリカのジャズ奏者なので、サウダージを感じさせるには今一つというところがありますが、現地のリズムに伍してなかなかの演奏を披露していると思います。

Cannonball's Bossa Nova (Fontana)

Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)
Clouds
Joyce's Samba
Batida Diferente
Sambop
Groovy Samba
Minha Saudade
O Amor Em Paz (Once I Loved)

Pedro Paulo, trumpet
Cannonball Adderley, alto sax
Paulo Moura, alto sax
Sergio Mendes, piano
Durval Ferreira, guitar
Octavio Bailey Jr., bass
Dom Um Romão, drums
Dec.7, 10 & 11, 1962, NYC

Jive Samba

Nat Adderley, cornet
Cannonball Adderley, alto sax
Yusef Lateef, tenor sax, flute
Joe Zawinul, piano
Sam Jones, bass
Louis Hayes, drums
Sep.21, 1962, San Francisco, CA

2009年5月16日 (土)

カルロス・リラの自作曲集

Thesoundofipanema カルロス・リラがセルジオ・メンデスやポール・ウィンターらと共演したこのレコードを僕は学生のころに買って聴いていました。あれからもう 40 年近くが経ってしまったけれど、いまだに飽きないでときどき棚から引っ張り出して聴いています。

リラはボサ・ノヴァの誕生に深く関わった作曲家、ギタリスト、歌手で、彼の曲のいくつかはジョアン・ジルベルトによって歌い広められ、また、彼の音楽はナラ・レオンにも大きな影響を与えています。

ただ、このボサ・ノヴァ黎明期に、当時のミュージシャンたちは、レコード会社との契約をめぐるトラブルなどから二手に分裂したりするなど、やっかいな問題を抱えていました。リラはジルベルトらのボサ・ノヴァに対し、自らの音楽をサンバランソと呼び、活動を続けていくことになります。

このあたりの事情はルイ・カストロ著、国安真奈訳『ボサノヴァの歴史 』(音楽之友社)に詳しいのですが、リラの音楽はジルベルト同様にボサ・ノヴァそのものなんですね。

と、とりあえず、ここまでボサ・ノヴァという言葉を使っているのですが、ジルベルトにしても「ボサ・ノヴァってなんのことだい。僕が歌っているのはサンバだよ」なんて言っていますから、音楽スタイルとしてのボサ・ノヴァは依然としてその定義がはっきりしないのです。

ということで、何をもってボサ・ノヴァとするかといった問題はひとまず棚上げにしておいて、僕らはリラが残したこのアルバムを楽しみたいと思うのです。

彼の歌は上質なシャンソンを聴いているようです。ウィンターはアメリカのジャズ・ミュージシャンですが、現地のリズム・セクションに対して全く違和感を感じさせない共演ぶりが見事。『ゲッツ / ジルベルト』で、スタン・ゲッツのノリにともすれば木に竹を接いだ感じがあるのとは大きな違いです。慎ましいメンデスのピアノも大きな魅力。シングル・トーンでありながら、とてもリズミックなものを感じます。

Paul Winter with Carlos Lyra : The Sound of Ipanema (CBS)

Vece É Eu
Se E Tarde Me Perdoa
Maria Ninguém
De Quem Ama
Quem Quizer Encountrar O Amor
Aruanda
Coisa Mais Linda
O Morro
Mas Tambem Quem Mandou
Tem Do De Mim
Lôbo Bôbo

Paul Winter (alto sax)
Sergio Mendes (piano)
Carlos Lyra (guitar, vocal)
Sebastião Neto (bass)
Milton Banana (drums)
1964, Rio de Janeiro

2008年9月 1日 (月)

「ジョアン・ジルベルトの伝説」をこのように聴いてみた

Theoldlegendary

「ジョアン・ジルベルトの伝説」The Legendary João Gilberto の CD は 1990 年にアメリカのワールド・パシフィックから発売され、国内盤は 1993 年に東芝 EMI から発売されました。これには、デビュー・アルバム「想いあふれて」Chega de Saudade (1959、Odeon)、2 作目「愛と微笑みと花」O Amor, o Sorriso e a Flor (1960、Odeon)、3 作目「ジョアン・ジルベルト」João Gilberto (1961、Odeon) からそれぞれ 12 曲全曲が収録され、さらに、これらとは別に単独で発表されていた「黒いオルフェ」Manhã de Carnaval、「二人の愛~フェリシダージ」O Nosso Amor / Felicidade が追加され、全 38 曲の内容になっています。

ボサ・ノヴァ誕生時に生まれたこれらの曲と演奏はいずれも発表当時の瑞々しさにあふれています。ジルベルトの歌とギターはこの当時すでに完成されていて、現在の耳で聴いても全く古びたところがありません。1 曲とて無視できないボサ・ノヴァの古典になっています。

この「ジョアン・ジルベルトの伝説」は、レコード会社がジルベルトの承諾を得ないまま発売したことで両者の間で訴訟となり、販売中止になってから現在まで再発売されていません。CD はデビュー・アルバム 1 曲目の Chega de Saudade で始まり、単独で出ていた Manhã de Carnaval と O Nosso Amor / Felicidade で終わる内容になっていますが、途中の曲は順不同に配列されています。

僕は幸いにしてこの国内盤を持っているのですが、三枚のアルバムの統一感が曲の配列によって大きく失われていることに気付きます。これでは安心して聴くことができません。やはり、オリジナル・アルバムの曲順で聴いてみたいという思いが残ります。

僕の CD プレーヤ Marantz CD-95 には CD ごとに曲順をメモリーして聴ける自動選曲機能がありますが、これも一枚の CD で 20 曲までとなっているのでこのアルバムでは使えません。

そこで、オリジナル・アルバムの曲順に 36 曲を並べ替えた CD-R を作ってみました。これだと、続けて聴いていても違和感がありません。ついでに、三枚のアルバムを配したジャケットも作ってみました。

Thenewlegendary


Chega de Saudade (1959)

Chega de Saudade
Lobo Bobo
Bringas, Nunca Mais
Hô-Bá-Lá-Lá
Saudade Fez um Samba
Maria Ninguém
Desafinado
Rosa Morena
Morena Boca de Ouro
Bim Bom
Aos Pés da Cruz
É Luxo Só

O Amor, o Sorriso e a Flor (1960)

Samba de Uma Nota Só
Doralice
Só em teus braços
Trêvo de Quatro Folhas
Se é Tarde Me Perdoa
Um Abraço no Bonfá
Meditação
O Pato
Corcovado
Discussão
Amor Certinho
Outra Vez

João Gilberto (1961)

Samba da Minha Terra
O Barquinho
Bolinha de Papel
Saudade da Bahia
A Primeira Vez
O Amor em Paz
Você e Eu
Trenzinho (Trem de Ferro)
Coisa Mais Linda
Presente de Natal
Insensatez
Este Seu Olhar

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この記事は 2006 年 1 月に作成したものです。

2007年12月19日 (水)

ナラ・レオンのデビュー・アルバム

Nara

日本に初めて紹介されたナラ・レオンのアルバムは Vento de Maio (1967) で、これが発売されたのは 1968 年頃のことだったかと思います。

当時、ボサ・ノヴァの女性歌手というとそれは何といってもアストラッド・ジルベルトであったのですが、大島守さんをはじめブラジルの音楽界に通じた人たちからは、アメリカナイズされたジルベルトの歌よりは、レオンこそが本国の音楽を伝える女性歌手であるというような紹介がされていました。

彼女のデビュー・アルバム『ナラ』を知ったのはそれからずっとあとのことです。

このアルバムは 1963 年暮れに録音されていますが、当時アメリカで盛んに演奏されていた曲は収録されていません。それどころか、モーホのサンビスタ、ゼー・ケチ Zé Keti やネルソン・カヴァキーニョ Nelson Cavaquinho らの曲が歌われているのに驚かされます。カルロス・リラやバーデン・パウエルやエドゥ・ロボの曲にしてもアフロ的な雰囲気を感じさせるものが選ばれています。

このことについて、レオンは「ボサ・ノヴァはもうたくさん。ちまちましたアパートの音楽を、二人か三人のインテリ相手に歌うのも、もうたくさん。私が求めているのはサンバなの。これこそ大衆の表現よ」などと述べています。

レオンのこうした変化は周囲のゴタゴタに翻弄された当時の彼女の心境をうかがわせるものですが、でき上がったアルバムは金持ちのお嬢さん芸とはいえ、やはり音楽がその時代の瞬間にしか持ち得ない新鮮な魅力に満ちています。なかでも、リラとパウエルの曲は聴きもの。


Nara Leão : Nara (Elenco)

Marcha da Quarta-Feira de Cinzas
Diz Que Vou Por Aí
O Môrro (Feio, Não é Bonito)
Canção da Terra
O Sol Nascerá
Luz Negra
Berimbau
Vou Por Aí
Maria Moita
Rezuiem Para Um Amor
Consolação
Naná

Nara Leão (vocal)
Geraldo Wesper (violão)
Baden Powell (violão)
Gaya (arranjos)
1963

2007年9月22日 (土)

キャノンボール・アダレイ・ウィズ・セルジオ・メンデス

Adderleyandmendes

1962 年 11 月、ニュー・ヨークのカーネギー・ホールでブラジルのミュージシャンが一同に会したボサ・ノヴァのコンサートが開かれた。参加したのはセルジオ・メンデス、オルカル・カストロ=ネヴェス、ジョアン・ジルベルト、カルロス・リラ、ホベルト・メネスカル、ルイス・ボンファ、ボラ・セチ等々の面々。

コンサートが終わって、セルジオ・メンデスたちは本場のジャズを聴くために『バードランド』を訪れた。このとき、ここに出演していたのがキャノンボール・アダレイで、彼らの音楽に大いに共鳴することになった。

このような経緯で実現したのがこの 12 月のレコーディングである。

アルバムは、セクステットのギタリスト、デュルヴァル・フェヘイラが作った「雲」で始まる。愁いを含んだメロディを静かに歌い上げるアダレイとこれを引き継ぐメンデスのシンプルなソロ。ここでは、アメリカのジャズ・マンがブラジルのミュージシャンと演奏したときにしばしば感じられる違和感は不思議と聞かれない。

中村とうよう氏のライナー・ノートには、このレコーディングに際し、アダレイが「アメリカのポップ曲、スタンダード曲などをボサ・ノヴァのフォーマットに押し込むようなことは一切やらず、彼らの独自の曲目だけを演奏することにした。彼らの曲に私自身のスタイルを適合させていくことで、彼らとの一致点を見いだしたかった」と述べたことが記されている。

ファンキーなジャズの代表者であって、しかもこの謙虚な気持ち。このような協調性や順応性がこのアルバムを成功に導いたという気がする。


Cannonball Adderley with Sergio Mendes and the Bossa Rio Sextet (Capitol)

Clouds
Minha Saudade
Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)
Batida Diferente
Joyce's Samba
Groovy Samba
O Amor Em Paz (Once I Loved)
Sambop

Pedro Paulo, trumpet
Cannonball Adderley, alto sax
Paulo Moura, alto sax
Sergio Mendes, piano
Durval Ferreira, guitar
Octavio Bailey Jr., bass
Dom Um Romão, drums
Dec.7, 10 & 11, 1962, NYC

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