ジャズ

2017年7月 2日 (日)

ブルー・ミッチェル『ブルーズ・ムーズ』

Bluesmoods

ブルー・ミッチェルというとすぐにホレス・シルヴァーのクィンテットを思い浮かべるのだが、彼単独のレコードはこれまで聴いたことがなかった。そうしたところ、ジャズ喫茶『モーニン』のブログで『ブルーズ・ムーズ』が取り上げられていたので、興味が湧き、聴いてみることにした。

『ブルーズ・ムーズ』はブルー・ミッチェルのトランペットとリズム・セクションという簡素な構成で演じられている。同様の楽器編成ではすでによく知られたものがいくつかある。それはアート・ファーマー『アート』(カデット)、ケニー・ドーハム『クワイエット・ケニー』(プレスティッジ)、ジョー・ワイルダー『ワイルダー・ン・ワイルダー』(サヴォイ)などで、ほかにリー・モーガン『キャンディ』(ブルー・ノート)もある。

初めて聴いた『ブルーズ・ムーズ』もこれらに次ぐ出来栄えと言っていい気がする。なんと言っても共演したウィントン・ケリーの溌剌としたピアノが素晴らしいし、また取り上げられた楽曲の良さも見逃せない。

こういう地味なレコードはやはりその道の達人に負うところが大きい。『モーニン』のマスターに感謝。

Blue Mitchel : Blue's Moods (Riverside)

I'll Close My Eyes
Avars
Scrapple from the Apple
Kinda Vague
Sir John
When I Fall in Love
Sweet Pumpkin
I Wish I Knew

Blue Mitchell (tp)
Wynton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Roy Brooks (ds)
Aug. 1960, NYC

2017年2月26日 (日)

リヴァーサイドのモンク

Theloniousinaction

セロニアス・モンクはリヴァーサイド・レコードに数々の録音を残した。その録音を『ブリリアント・コーナーズ』『ヒムセルフ』『ウィズ・コルトレーン』という具合に辿ってくると、さて、この次は何を聴こうかという気持ちになる。それは、この三枚が途方もない山頂を形成していて、これらを登りつめたあとはもう下山するしかないという気にさせられるからだ。だが、登頂だけが山登りの楽しみではない。登山道の途中にだって大きく眺望の開ける場所があるにちがいない。

というわけで、リヴァーサイドの他の作品『イン・アクション』『ミステリオーソ』を聴いてみた。これはジョニー・グリフィンらが加入していた当時のモンク・クァルテットがニューヨークのファイヴ・スポットに出演したときのもの。モンクは管楽器を入れたクァルテットを長く率いたが、これが現実的には自作曲を演奏する際の最良の編成であったことが納得させられる。

Thelonious Monk : Thelonious in Action  (Riverside)

Light Blue
Coming on the Hudson
Rhythm-A-Ning
Epistrophy (theme)
Blue Monk
Evidence
Epistrophy (theme)

Thelonious Monk : Misterioso  (Riverside)

Nutty
Blues Five Spot
Let's Cool One
In Walked Bud
Just a Gigolo
Misterioso

Johnny Griffin (tenor sax)
Thelonious Monk (piano)
Ahmed Abdul-Malik (bass)
Roy Haynes (drums)
"Five Spot Cafe", NYC, August 7, 1958

Misterioso

2016年7月26日 (火)

トミー・フラナガン『エンヤ・デイズ』

Enyadays

『エンヤ・デイズ』はトミー・フラナガンがドイツのエンヤ・レーベルに残した 1977 年から 1993 年までの 8 枚のアルバムから 11 曲を選んで纏めたもの。この間、ベーシストはジョージ・ムラーツ、レッド・ミッチェル、ジョージ・ムラーツ、ジェスパー・ルンドガードへと、ドラマーはエルヴィン・ジョーンズ、アル・フォスター、アート・テイラー、ルイス・ナッシュへと変遷する。

僕には録音の古いもののほう、特に、ジョージ・ムラーツとのデュオ「ブルー・トウェンティ」と「ウィズ・マリス・トゥワード・ナン」がよかった。

「ウィズ・マリス・トゥワード・ナン」はトム・マッキントッシュという人の曲で、後藤誠氏の解説によれば、フラナガンは彼の音楽をデューク・エリントンやビリー・ストレイホーンに続くアフリカン・アメリカンの遺産と高く評価し、頻繁に取り上げていたという。

このトム・マッキントッシュは、ジャズテットやサド・ジョーンズ・メル・ルイス楽団で活躍したトロンボーン奏者で、本業は牧師であるとのこと。なるほど「ウィズ・マリス・トゥワード・ナン」からはスピリチュアルな響きが感じられる。また、アルバムの中でも最も魅力ある一曲となっている。

Tommy Flanagan : Enja Days (Enja)

Blue Twenty (Tommy Flanagan)
I Love you (Cole Porter)
A Blue Time (Tadd Dameron)
Elusive (Thad Jones)
Maybe September (Percy Faith)
Central Park West (John Coltrane)
Pannonica (Thelonious Monk)
Three for All (Tommy Flanagan)
Relaxin' at Camarillo (Charlie Parker)
With Malice Toward None (Tom McIntoch)
Things Ain't What Used to Be (Duke Ellington)

Phil Woods, alto saxophone
Tommy Flanagan, piano
George Mraz, bass
Red Mitchell, bass
Jesper Lundgaard, bass
Elvin Jones, drums
Al Foster, drums
Art Taylor, drums
Lewis Nash, drums
1977, 1978, 1980, 1981, 1982 NYC
1993 Denmark

2016年4月 3日 (日)

ハンク・ジョーンズ:ザ・トリオ

Thetrio

ハンク・ジョーンズは 1950 年代半ば、ベースのウェンデル・マーシャル、ドラムスのケニー・クラークと共にサヴォイ・レコードのハウス・リズム・セクションとして、同レーベルの数多くの録音セッションに参加していたようだ。「いたようだ」というのも、僕が持っているサヴォイのハンク・ジョーンズは『ジョー・ワイルダー:ワイルダー・ン・ワイルダー』、『ミルト・ジャクソン:オパス・デ・ジャズ』、それにこの『ザ・トリオ』だけで、ほかのアルバムを知らないからなのだ。

サヴォイのアルバムは、レコード発売当時のカタログを見てもおしなべて地味な内容だし、加えてハンク・ジョーンズがまた地味なピアニストであったから、この時代の彼の活躍ぶりに通じているファンは多くはなかったように思う。

そのハンク・ジョーンズのリズム・セクションがサヴォイに残した『ザ・トリオ』。内容はやはり渋い。ピアノ・トリオのアルバムとしておよそ欠点が見つからない。ただ、その良さを感じ取るまでに多少時間がかかるだけなのだ。

サヴォイのハンク・ジョーンズのアルバムとしてはほかに、同じトリオのものや、『オパス・デ・ジャズ』以外にもミルト・ジャクソンと組んだ二枚があるとのこと。1970 年代以降相当数出たグレイト・ジャズ・トリオを承知の上で、僕としては、こちらサヴォイのものを探し求めたい。

Hank Jones : The Trio (Savoy)

We're All Together
Odd Number
We Could Make Such Beautiful Music Together
Now's the Time
When Hearts Are Young
Cyrano
There's a Small Hotel
My Funny Valentine

Hank Jones (p)
Wendell Marshall (b)
Kenny Clarke (ds)
Aug. 4, 1955, NYC

2016年2月17日 (水)

スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム

Stangetzinstockholm

スタン・ゲッツが 1940 年代末から 1950 年代中ごろにかけて録音したレコードはいずれも名演揃いであり、加えて、アルト・サックスに紛うクールな響きが、しだいに暖かく、力強さを増していく姿を記録していて、興味が尽きない。

この時期のレコードに『イン・ストックホルム』という一枚があって、なかなか入手できないでいたところ、市の図書館が CD を所蔵していることがわかったので、早速聴いてみた。

録音されたのは 1955 年 12 月。プレスティッジやルーストのとびっきりクールなセッションから四、五年経過し、J・J・ジョンソンとの白熱したライヴ盤『アット・ジ・オペラ・ハウス』にはまだ二年を要する時点。音楽の手触りがなだらかに変化していくさなかの録音である。

ここでのゲッツの吹奏は自信にあふれている。場所ごとに力をつけ、関脇、大関を駆け抜けるように登っていく横綱寸前の力士にしか見られない勢いを想像させる。「天馬空を行く」とはこんな演奏を言うんだろうなあ。

Stan Getz in Stockholm (Verve)

Indiana
Without a Song
I Don't Stand a Ghost of a Chance with You
I Can't Believe That You're in Love with Me
Everything Happens to Me
Over the Rainbow
Get Happy
Jeepers Creepers

Stan Getz (ts)
Bengt Hallberg (p)
Gunnar Johnson (b)
Anders Burman (ds)
Recorded December 16, 1955, Stockholm, Sweden

2015年11月24日 (火)

キャノンボール・アダレイ:ノウ・ホワット・アイ・ミーン

Knowwhatimean

キャノンボール・アダレイの音楽を聴くといつも豊かな気持ちになる。

キャノンボールは、同時代のマイルスやコルトレーンやロリンズに比較してという意味であろうが、とかく締りがないイメージでとらえられてきた。作家の村上春樹は和田誠との共著『ポートレイト・イン・ジャズ』でこんなことを言っている。

キャノンボールという人は、最後にいたるまで、真にデモーニッシュな音楽を作り出すことはなかった。彼は自然児として地上に生まれ、そして自然児として生き抜いて、おおらかなままで消えていった。推敲や省察は、裏切りや解体や韜晦や眠れぬ夜は、この人の音楽の得意とするところではなかった。

いかにもこの作家らしい物言いで、たしかにそのとおりなのだが、しかし彼が残した録音を聴いて、僕はその大らかな演奏に旨い定食に出会ったような満足を感じる。粒の立ったご飯は多すぎず少なすぎず、小鉢だって洒落ている。

『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』は自らのグループを離れた録音のためのセッション。ビル・エヴァンスやジョン・ルイスの曲に寄り添う吹奏ぶりがとても好ましい。

Cannonball Adderley : Know What I Mean? (Riverside)

Waltz for Debby
Goodbye
Who Cares?
Venice
Toy
Elsa
Nancy (with the Laughing Face)
Know What I Mean?

Julian ``Cannonball'' Adderley, alto sax
Bill Evans, piano
Percy Heath, bass
Connie Kay, drums
Jan., Feb., Mar., 1961, NYC

2015年10月29日 (木)

エラとジョー・パスのデュオ

Takeloveeasy

エラ・フィッツジェラルドとジョー・パスが共演したレコードがあることは知っていたけれど、僕はこれまで聴いたことがなかった。

エラのアルバムで所有しているのは、エリス・ラーキンスとのデュオが二枚とルイ・アームストロングとの共演盤が一枚だけで、エラの若いときの歌声が聴けるこれらがあれば僕には十分だと思っていた。それに、ジョー・パスのギターにも正直なところあまり関心がなかった。パスはシナノンの療養所暮らしが長く、表立って活躍しだしたときにはすでに若くはなかった。ジャズ界にいわば遅れてやって来たミュージシャンに対して興味が薄れるのも仕方がないことだと思っていた。

そうしたところ、このブログにコメントを寄せて下さっている ANNA さんからエラとパスのデュオ・アルバムを教えてもらったのだった。このアルバムをこちらの図書館が所蔵していたので、さっそく聴いてみた。

初めて聴いたこのアルバムはやはりよかった。エラの歌のうまさについてはもう感服する以外にない。図書館の CD には、ベニー・グリーンによるライナー・ノーツの和訳が載っていて、器楽奏者にも紛うほどの彼女の正確な歌唱法について、具体例をあげて述べている。

エラとパスのデュオ・アルバムは大好評を博し、次々と続編が出たとのことだ。

Ella Fitzgerald - Joe Pass : Take Love Easy (Pablo)

Take Love Easy
Once I Loved
Don't Be That Way
You're Blase
Lush Life
A Foggy Day
Gee Baby, Ain't I Good to You
You Go to My Head
I Want to Talk about You

Joe Pass (guitar)
Ella Fitzgerald (vocal)
1973

2015年9月10日 (木)

ビル・エヴァンス『タイム・リメンバード』

Timeremembered

作家の堀江敏幸が著した『目ざめて時計をみると』は、身近な風景や身の回りのものを撮った写真集で、著者が愛聴していると思われる LP レコードを撮った写真も何点か含まれている。その中に、ビル・エヴァンスの『タイム・リメンバード』(リヴァーサイド)があって、著者のエヴァンス好きがうかがわれて愉しい。

『タイム・リメンバード』は、エヴァンス歿後に発表されたアルバムで、生前の『アット・シェリーズ・マン・ホール』(リヴァーサイド)と同じ日の録音を音源にしている。同時期の同メンバーによるトライデントでのライヴ盤(ヴァーヴ)ともども、発掘音源を編集したアルバムとしては、とてもよくまとまった内容になっている。

このころのエヴァンスはいいですね。

Bill Evans : Time Remembered (Riverside)

Who Cares?
In a Sentimental Mood
Everything Happens to Me
What Is This Called Love?
Time Remembered
My Heart Stood Still
Lover Man
How About You?

Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Larry Bunker (drums)
May 30 & 31, 1963, Shelly's Manne-Hole, Hollywood

2015年7月19日 (日)

ポール・ブレイ:ソロ・イン・モントゼー

Soloinmondsee

ポール・ブレイは 1972 年に録音された『オープン、トゥ・ラヴ』(ECM)以後もソロ・アルバムをいくつも録音している。このうち、僕は 74 年の『アローン・アゲイン』(I.A.I.)、77 年の『アクシス』(I.A.I.)、83 年の『タンゴ・パレス』(ソウル・ノート)を所有し、機会あるごとに聴いてきた。

ポール・ブレイのジャズについてはこれまでに多くの人が語っているが、特にピアノ・ソロを聴くときに思い出されるのは、クラシック音楽の批評家であった黒田恭一氏の言葉。

ポール・ブレイがピアノからつむぎだす音楽を、ぼくは、他の人のいる場所ではなく、ひとりでききたいと思う。他のききてがいる場所では、すくなくともぼくは、ポール・ブレイの音楽を特徴づけているもののひとつである精妙きわまりない音のつらなりが、たのしみにくくなる。孤独の影濃い〈といっていいと思う〉音の詩人のつぶやきは、できることなら、ひとりで、ききたい ---- と。

『ソロ・イン・モントゼー』は『オープン、トゥ・ラヴ』以来の ECM からのソロ・アルバム。

モントゼーはオーストリアの都市で、ロバート・ワイズ監督の映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中のマリアとトラップ大佐の結婚式は、当地の教会で収録されたとのこと。ま、これはブレイのアルバムとは関係がない。

録音に使用されたピアノはベーゼンドルファー・インペリアルである由。ビタースウィートなピアノの音がとても美しい。

Paul Bley : Solo in Mondsee (ECM)

Mondsee Variations
I
II
III
IV
V
VI
VII
VIII
IX
X

Paul Bley (piano)
Apr. 2001, Schloss, Mondsee, Austria

2015年3月 9日 (月)

テイタム、ウェブスター・クァルテット

Thetatumgroupmasterpieces

アート・テイタムとベン・ウェブスターが共演したアルバムがあることは、ジャズを聴き始めた頃から知っていました。遠く昭和 44 年に刊行された『ポピュラー音楽全集』(小学館)の中で、粟村政昭氏がスイングからモダン初期の名盤 20 枚にこれを選んでいます。

その存在を知ってもう 45 年にもなるのに、僕はこれまでこのアルバムを聴いたことがなかった。古いジャズが殊更嫌いだというわけではなく、ベイシーだってレスターだって聴くのですが、「巨匠同士の共演」などという評価が敷居を高く感じさせていたのかもしれません。

でも、このアルバムを聴いてみて、やはり良かった。もし齢をとって良いことがあるとしたら、このようなジャズを聴けること、なんて思いました。

このレコードは初めヴァーヴ・レーベルから出ていたのですが、パブロから再発売されるに当たってジャケットが変更され、さらに制作者のノーマン・グランツによって曲順も変えられたとのことです。

The Tatum Group Masterpieces (Pablo)

Gone with the Wind
All the Things You Are
Have You Met Miss Jones?
My One and Only Love
Night and Day
My Ideal
Where or When

Ben Webster (ts)
Art Tatum (p)
Red Callender (b)
Bill Douglass (ds)
1956, LA

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