クラシック音楽

2017年8月28日 (月)

ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 作品 81

Dvorakpianoquintet

ドヴォルザークのピアノ五重奏曲 作品 81 はメナヘム・プレスラーとエマーソン弦楽四重奏団の共演盤で聴いたことがあったのだが、そのときはこの曲の魅力は感じられずにいた。いつ終わるとも知れない果てしない緩徐楽章に閉口したのを思い出す。先に同じ演奏家たちのシューマン:ピアノ五重奏曲/四重奏曲を愛聴していたから、不思議な気持ちだった。

それからしばらくしてスヴャトスラフ・リヒテルとボロディン弦楽四重奏団にこの曲の録音があることを知り、もう一度聴いてみることにした。久しぶりのドヴォルザークはとても瑞々しく、あの緩徐楽章も曲全体の一番の聴かせどころになっていた。リヒテルたちの演奏に見られるゆったりしたテンポと旋律の歌わせ方がそう感じさせているだろう。

レコードの解説で村田武雄氏はこう述べている。

ドヴォルザークの音楽のなかに深くしみこんでいる、スラヴ的な民族色は、かれの作品を演奏する場合に、第一に考慮しなければならない特徴である。(中略)スヴャトスラフ・リヒテルといい、またボロディン弦楽四重奏団といい、いずれもソビエトの演奏家であるから、スラヴの血をもった、ドヴォルザークの音感を肌で実感しうる人々である。それが瑣末の問題よりはるかに曲の真実を再現するのに、代えがたい迫真力を与えている。

民族色が濃い音楽においてはたしかにそのとおりだろうなと思った。

Dvorak : Piano Quintet in A Major Op.81 (Victor)

Sviatoslav Richter, piano
Borodin Quartet
Moscow, 1983

2017年5月14日 (日)

ヤナーチェクのピアノ曲

Arecollection_2

1970 年代初頭、日本コロムビアから出ていた音源が一斉に新興レーベルの CBS ソニー・レコードに移ったとき、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団の《新世界から》にボーナス・レコードが一枚追加され、これにヤナーチェクの《シンフォニエッタ》第一楽章が収められていた。これがヤナーチェクの音楽を初めて聴いたときで、金管の摩訶不思議な響きがとても新鮮だった。

しかし、その後、《タラス・ブーリバ》、《利口な女狐の物語》、弦楽四重奏曲などを聴いても、どれもつかみどころのない印象ばかりで、そのうちにこれらのレコードはすべて処分してしまった。

そうしたところ、図書館所蔵の音源を検索していたら、アンドラーシュ・シフが演奏するピアノ曲集があるのを知った。さっそく借りてきて聴いてみたのがこの CD。

《霧の中で》《草かげの小径にて》《思い出》など、題材が身近で、どれも短い曲ばかり。ロバート・コーワンという人が、「クリエイティブな才能を守る固い繭の中で無垢な子供のままでいることができたヤナーチェクの純粋性や感情豊かな率直さが伝わってくる」(小林誠一訳)と解説している。

ときどき思い出して聴いてみたくなる曲集。

Leos Janacek : A recollection (ECM)

In the mist
Sonate
On an overgrown path I
On an overgrown path II
On an overgrown path (Paralipomena)
A recollection

Andras Schiff (Piano)
January 2000

2017年4月29日 (土)

ミュシャの絵のジャケット

いま国立新美術館でミュシャ展が開催されているようだ。会期は六月五日までとなっているが、いろいろと用事があるので、行けそうにない。

ミュシャというと、彼の絵をジャケットに使ったレコードが手元にある。これは当時の東芝 EMI が「フランス音楽のエスプリ・シリーズ」と題して発売したもの。このシリーズが最近になって CD でも発売された。

http://wmg.jp/special/lesprit/

EMI はワーナー・ミュージックに売却されたので、レーベルもロゴも変更されている。

この新シリーズにはパレナン四重奏団の「ドビュッシー、ラヴェル:弦楽四重奏曲」や「ショーソン:ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のためのコンセール他」も入っていて、僕にもそのレコードがあるのだが、ジャケットは別のものになっている。

つまり、このシリーズは、当時既発売のフランス音楽の音源にミュシャの絵をあしらい、意匠を新たに再発売したものということらしい。

ジャケットの大きな LP でもう何枚か欲しくなった。

Dscn0922
Maurice Ravel : Sonate pour Violon et Piano, Sonate pour Violon et Violoncelle, Trio en la mineur pour Piano, Violon et Violoncelle

Gerard Jarry, violon
Georges Pludermacher, piano
Michel Tournus, violoncelle
1970-73

Dscn0921
Cesar Franck : Quatuor a Cordes

Quatuor Parrenin
1972

2017年4月 8日 (土)

エルガー:海の絵

Seapictures

手元に音楽之友社の『クラシック・ディスク・コレクション 301』という冊子がある。1996 年発行のもので、もう内容が古いのだが、いまだに時々読み返している。というのは、一般的にはそれほど知られていない曲が多く収録されているから。

この中にエルガーの《海の絵 作品 37》というのがある。この曲を藤野竣介氏が次のように紹介していて、聴いてみたくなった。

《海の絵》は五曲からなる、コントラルトあるいはメッゾ・ソプラノと管弦楽の連作歌曲。(中略)みなチャーミングな佳曲揃いだ。どの曲もエルガーの筆は伸びやか。世紀末の煩悶とは無縁の地平で、海をめぐるロマンチックな夢想を楽しんでいる。

買い求めたのは藤野氏が紹介していたジャネット・ベイカーとジョン・バルビローリ指揮ロンドン交響楽団のもの。海を題材にした多くの曲のように、深々として、伸びやかで、豊かな気持ちになる。

併録の曲は同じエルガーのチェロ協奏曲。有名なジャクリーヌ・デュ・プレのもの。この組み合わせが初出当時のものらしい。

《海の絵》は録音が少なく、この冊子の刊行当時、国内盤ではほかにデラ・ジョーンズとチャールズ・マッケラス指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のものがあるのみだったという。

Elgar : Cello Concerto, Sea Pictures (EMI)

Jacqueline Du Pre (Cello)
Janet Baker (Contralto)
The London Symphony Orchestra
conducted by Sir John Barbirolli
1965

2017年2月 3日 (金)

シューベルト:ピアノ三重奏曲第一番他

Pianotrioop99

シューベルトのピアノ三重奏曲第一番はかつてルービンシュタイン、シェリング、フルニエの盤で聴いていたが、程なく処分してしまった。彼らの演奏が気に入らなかったわけではない。冒頭の運動会の行進を思わせる主題が耳につき、聴き通すことができなかったのだ。

それが歳をとるにしたがって、あくの強い主題も次第に耳に触らなくなり、全曲を聴き通せるようになった。年齢とともに感受性が衰えるのは仕方ないにしても、聴ける音楽が増えようとは思いもしなかった。

というわけで、長い中断を経て再び買い求めたのはスーク・トリオの PCM 録音盤。もっと新しい録音もあるのだが、彼らの演奏は先にベートーヴェンの大公を聴いて好ましく感じていたから。

打てば響くという形容そのままの彼らの鋭敏で、しかも力強さを備えた演奏は、室内楽を聴く楽しみと醍醐味を味わわせてくれる。

併録のノットゥールノの息を潜めた開始は、ハ長調の弦楽五重奏曲の緩徐楽章を思わせる。この繊細な響きも十分に捉えられている。

Schubert : Trio in B-flat, Nottruno in E-flat (DENON)
Trio in B-flat Major for Piano, Violin and Cello, op.99
Nottruno in E-flat Major for Piano, Violin and Cello, op.148
Suk Trio
Jan Panenka, piano
Josef Suk, violin
Josef Chuchro, chello
June 19 and 20, 1975
Lucany, Romancatholic Church St. Mary, CSSR

2016年8月 7日 (日)

暑い夏に中南米のギター曲

Artsauvage

真夏に聴ける音楽はそんなに多くない。

これまでは、イツァーク・パールマンがアンドレ・プレヴィンと組んだスコット・ジョプリンの曲集や、チック・コリアとゲイリー・バートンのチューリッヒでのライヴ・アルバムが夏に聴く音楽の定番だった。

今年は、斎藤明子の『アール・ソヴァージュ』を聴いている。これは二十世紀初頭に活躍した中南米の三人の作曲家、ポンセ、バリオス、ヴィラ=ロボスの作品集。

異国的な情緒に加えて、響きが洒落ていて、涼やかで、とてもいい。

斎藤明子:Art Sauvage (SONY)

Manuel Maria Ponce (1882-1948)
 Estrellita
 3 Cantiones Populares Mejicanas
 Marchita El Alma
 Scherzino Mexicano
Agustin Barrios (1885-1944)
 La Catedral
 Vals Op.8-3
 Vals Op.8-4
Heitor Villa-Lobos (1887-1959)
 Choros No.1
 Suite Populaire Bresilienne
 Bachianas Brasileiras No.5 - Aria

斎藤明子, Guitar
March, 1993

2016年5月 8日 (日)

ディーリアス:管弦楽曲

Deliusorchestralworks

音楽評論家の出谷啓氏は、少年時代にディーリアスの音楽と出会ったときのことを回想し、次のように述べている。

何も主張しない音楽。路傍の花のような音楽。何も主張しない代わりに、人が気付くのをじっと待っている。聴き手の優しさとか、感受性を試すような、恐ろしくも美しい音楽があるのを少年は知ったのである。少年はディーリアスの作品を聴いていると、どこまでも優しくなれるような気がした。

ディーリアスの音楽を聴くと、「路傍の花のような音楽」と表現した出谷氏の気持ちが身近に感じられる。音楽が向こうからやってきて、聴き手の気持ちをいやがおうにも高揚させるなどとは正反対に位置する音楽。聴き手に静かに対話を求めるような音楽と言っていいのかもしれない。

ディーリアスは、僕には、「素湯のような」と形容された岩本素白の随筆を思わせる。

Delius : Orchestral Works (EMI)

A Song of Summer
"Irmelin" Prelude
The Walk to the Paradise Garden
In a Summer Garden
La Calinda (arr. Fenby)
On Hearing the First Cuckoo in Spring
Brigg Fair - An English Rhapsody

The London Symphony Orchestra
The Halle Orchestra
Cond. by Sir John Barbirolli
1968, 1969, 1970

2016年4月17日 (日)

グールドのシェーンベルク:ピアノ曲集

Schoenberg

シェーンベルクの曲のディスクは管弦楽、室内楽などを所有しているのだが、弦楽六重奏曲の『淨夜』を除けば、他の作曲家の曲のように楽しめているわけではもちろんない。なんといっても難解だし、特に十二音技法で書かれた後年のものなどは、ふだん耳にする曲と同列に並べて聴くことなどできそうにない。精妙精巧に構築され、ただならぬ緊張をもって演奏された音符と休符からなる織物がそこに存在するの認めるだけだ。

ピアノ曲についても同様。この曲集については 1974 年のマウリツィオ・ポリーニによる録音が絶対的な評価と支持を得ているようだ。しかし、これだって僕には、あらゆる角度から検討吟味された複雑巧緻なシステムを思い浮かべるしかないのだった。

『淨夜』のように聴ける演奏はないものかと考えていたら、グレン・グールドがポリーニに先立って録音していたのを思い出し、さっそくこのレコードを買い求めた。

早々に聴いてみたグールドのシェーンベルクはいっぺんに身近に感じられた。これまで聴いていたポリーニとの違いは僕にはよくわからない。ただ、石田一志氏のレコード解説がそのヒントを与えてくれそうな気がする。氏はこう述べている。

ポリーニ以降の演奏志向は何になったのだろうか。結局は、このグールドのように分析を前提にそれを超えることになったのではあるまいか。分析を超え、シェーンベルクの作曲を促した、内的衝動というべき表現意欲を解釈表現することになったのではあるまいか。グールドの演奏の新鮮さ、すばらしさは、正にこのシェーンベルクの内的衝動への感情移入にある。(中略)シェーンベルクの初期から晩年の楽譜にまで一貫して顕著な変化に富んだ、フレージング、ディナーミクの表記、詳細な感情表記はなによりもグールドが示しているような豊かな感情移入を要求している証明なのである。

そんなとき、図書館に、内田光子が新ウィーン楽派のピアノ曲を入れた CD があったので、これも聴いている。シェーンベルクのピアノ曲は、作品 11 と 19 が収録されている。

Arnold Schoenberg : The Complete Music for Solo Piano (CBS)

Drei Klavierstucke, Op.11
Funf Klavierstucke, Op.23
Seches Kleine Klavierstucke, Op.19
Suite fur Klavier, Op.25
Klavierstuck, Op.33a
Klavierstuck, Op.33b

Glenn Gould, Piano
1958, 1964, 1965, NYC

2016年3月13日 (日)

バルトークの弦楽四重奏曲

The6stringquartets

バルトークの弦楽四重奏曲を初めて聴いたのは 20 代の頃だった。職場の先輩にクラシック音楽の愛好者がいて、彼からこの全集のレコードを借りたのだった。今となっては誰の演奏だったのか記憶が曖昧なのだが、1970 年代中ごろのことなので、ジュリアード弦楽四重奏団だったかもしれない。僕は一番と二番の四重奏曲が好きだった。

その後東京クァルテットが演奏した全集を入手し、ずっとこれを聴いてきた。途中でスピーカー・システムを更新したら弦楽器の音が良くなり、この曲集がますます好きになった。

そうしたところ、今ごろになってアルバン・ベルク弦楽四重奏団を聴き出し、この団体の精緻きわまりない演奏でバルトークを聴いてみたらどうかなと思い、図書館所蔵の CD を借りてきた。予想どおりこちらの演奏も素晴らしかった。僕には一番、二番、六番が良かった。

図書館にはもう一組、ハーゲン弦楽四重奏団の全集もあって、こちらも聴いてみたのだが、この団体では三番、四番、五番も良いように思った。

ということで、バルトークの弦楽四重奏曲はうるさく感じられるような演奏ではその良さがうまく伝わらない。精度の高い演奏を要求する難曲ということなのだろう。

Bela Bartok : The 6 String Quartets (Deutsche Grammophon)
Tokyo String Quartet
1975-80, London, Hamburg, NYC

Bartok : Complete String Quartets (EMI)
Alban Berg Quartett
1985, 1986, Seon, Switzerland

Bela Bartok : Die Streich Quartette (Deutsche Grammophon)
Hagen Quartett
1995, 1998, Polling, Salzburg, Austria

Bartokcompletestringquartets
Diestreichquartette

2016年1月25日 (月)

ダウランド:リュート歌曲集

Dowlandlutesongsvolume2

古楽の研究家でありリュート奏者でもある英国のアントニー・ルーリーは、自ら創立した団体コンソート・オブ・ミュージックとともに、自国の作曲家ジョン・ダウランドの作品の数々を録音している。

初めに出たのがリュート曲全集(LP 5 枚組)、次いでリュート歌曲集(LP 4 枚組が二巻)。僕はここまでを入手したのだが、このほかにも歌曲数曲や合奏曲集があって、ルーリーはこれらすべてを録音したようだ。

LP で 13 枚のダウランド、僕はこれらをジャズやクラッシック音楽に疲れたとき、ふと取り出して聴く。

『古楽 CD100 ガイド』(国書刊行会)の巻頭に、小説家の佐藤亜紀がこんなことを書いている。

ペルゴレージの『スタバート・マーテル』さえ些か形式が整い過ぎ、集中を要し過ぎて重荷に感じ、ましてワーグナーにもヴェルディにも我慢できず、さりとてフォーレやドビュッシーの線の細さはかえって苛立たしく、それならジャワのガムランでも聞けばよさそうなものだが、あの金属的な打撃音に堪える自信がなく、と言って音が何もない状態も頼りない、と言うような時に、あまりヴォリュームを上げず、音で全身をふんわり包むようにして聞くのである。

そう、古楽を聴くのはこんなときです。

John Dowland : Complete Lute Songs, Vol.2 (L'Oiseau-Lyre)

Third and Last Booke of Songs or Aires 1603
A Pilgrimes Solace 1612 (The Fourth Booke of Songs)

The Consort of Musicke directed by Anthony Rookey (Lute)
Emma Kirkby (Soprano)
Glenda Simpson (Soprano)
John York Skinner (Countertenor)
Martyn Hill (Tenor)
David Thomas (Bass)
Catherine Mackintosh (Treble Viol)
Polly Waterfield (Tenor Viol)
Ian Gammie (Tenor Viol)
Trevor Jones (Bass Viol)
Mar. & Oct. 1977, Hampstead, England

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