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2017年1月

2017年1月 5日 (木)

バラード『コーラル D の雲の彫刻師』再読

Vermilionsands

J・G・バラードの『コーラル D の雲の彫刻師』は連作短篇集『ヴァーミリオン・サンズ』の冒頭を飾る一篇。彼が亡くなって「SF マガジン」誌が追悼特集を組んだときにも、真っ先に取り上げられたのがこの作品だった。

この短篇集はバラードの作品の中でもとりわけ人気が高い。それは、作品ごとの場面が統一されていることと、全篇を覆う退廃的な気分、そして音響彫刻、砂エイ、砂上ヨット、雲の彫刻など、近未来的で異国的な舞台装置のほか、朽ちていくものに抱く郷愁に似た感情のせいなのかもしれない。

この『コーラル D …』を原文で読んでみた。僕には知らない単語が多く、読了するのに多くの時間を要した。それでも、一つ一つの文章が即物的で乾いているうえに描写が具体的で、視覚的な想像力が喚起される。初期のバラード作品の好例だ。

バラードは1970 年代に入ると、暴力的な場面をしつこく描写しだした。僕はこの変化に驚くとともに、作風の変化に追随できなくなった。だが、今回『コーラル D …』をゆっくり読んで気づいたのだが、この作品にも後年に通じる異様で不気味な場面がすでにあったのだ。

物語の終わり近く、別荘を襲った竜巻により、雲の彫刻師ヴァン・アイクが電線に首を吊るされて死ぬ。彼の頭部を輪状になった電球が点滅する場面の気味の悪さ。70 年代以降の作風の変化も突然生じたわけではないということなのだろう。

J. G. Ballard : Vermilion Sands (1971)
The Cloud-Sculptors of Coral D (1967)
Prima Belladonna (1956)
The Screen Game (1962)
The Singing Statues (1962)
Cry Hope, Cry Fury! (1966)
Venus Smiles (1957)
Say Goodbye to the Wind (1970)
Studio 5, The Stars (1961)
The Thousand Dreams of Stellavista (1962)

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