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2016年4月24日 (日)

ホイットニー・バリエット氏のライナー・ノーツ

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ジャズ評論家の粟村政昭氏の著書を読むと、米国の評論家ホイットニー・バリエット氏の表現が引用されている箇所にぶつかる。たとえば、『ジャズ・レコード・ブック』(東亜音楽社)のフィリー・ジョー・ジョーンズの項ではこんな具合である。

ともあれ彼のドラミングは、ホイットニー・バリエットがいみじくも表現したように good old-fashioned emotion に貫かれたものであり、モダンでありながらジャズ本来の伝統を強く感じさせるところにその身上があったわけである。

そこで、文学的と形容されるバリエット氏本人の文章はどんな感じなのだろうと思い、手持ちのレコード・ジャケットのライナー・ノーツから彼のものを探した。見つけたのは、ジョン・ルイスの『グランド・インカウンター』一枚のみ。粟村氏がしばしば引用するもう一人の評論家マーティン・ウィリアムズ氏の文章が多くのレコードのラーナー・ノーツに見つかるのとは対照的だ。

その『グランド・インカウンター』のライナー・ノーツはおよそジャズの表現らしくない Nostalgia is cheap witchcraft. という一文で始まる。これに続き、スウィング時代の数々の巨人たちを賛美し、ときには現在(1950 年代半ば)の最前線の演奏家たちに強烈な皮肉を放ち、ジャズが失ってしまったものを嘆く。

バリエット氏のジャズ批評の根拠はスウィング時代の演奏にある。『グランド・インカウンター』でのジョン・ルイス以下の演奏家たちは、スウィング時代の巨人たちの伝統を継承しているがゆえに優れている、とでも言っているようだ。モダン・ジャズのレコードに彼のライナー・ノーツが少ないのも、このような彼の批評態度からきているのかもしれない。

バリエット氏は 1954 年から 2001 年までの間、『ザ・ニューヨーカー』誌でジャズや書評のコラムを持っていたというが、どんなジャズを取り上げていたのかはもちろんわからない。

ところで、文学的であると形容されるバリエット氏の文章は、多彩なレトリックをふんだんに用いたもので、僕には何を表現しているのかわからない箇所が多かった。たとえば、ルイスたちの演奏を表現した interdependent relaxation という言葉。どんな用法があるのか Yahoo! で検索したら、結果はたったの 4 件。そのうちの 1 件はこのライナー・ノーツをそのまま掲載したページだった。

Grand Encounter (Pacific Jazz)

Love Me or Leave Me
I Can't Get Started
Easy Living
2 Degrees East - 3 Degrees West
Skylark
Almost Like Being in Love

Bill Perkins (tenor sax)
John Lewis (piano)
Jim Hall (guitar)
Percy Heath (bass)
Chico Hamilton (drums)
Feb. 10, 1956, LA

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コメント

あちらのライナーノーツと向き合うなんて、流石ヒラさん。
僕はいつも、うらめしく輸入盤の裏を眺めておりました。

マスター、こんにちは。

原盤のライナー・ノーツは録音現場の雰囲気を直に伝えていて、苦労して読んでみる価値はありますね。

ジーン・リースが書いた『ゲッツ/ジルベルト』、コルトレーンの『バラード』、『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス・トリオ』などが面白かったです。

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