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2015年12月17日 (木)

高井有一『時のながめ』

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新聞に高井有一の随筆集『時のながめ』の広告が載っていて、気に留めていた。先日、書店に入ったらこの本があって、小ぶりなうえに装幀がとても美しいので、すぐに買い求めた。『時のながめ』は著者九年ぶりの随筆集とのこと。

この作家のことであるから戦争に対する想いが語られるのは当然としても、郷里の角館町のことを綴ったものがいくつかあって意外な気がした。これまでは固有名を慎重に伏せてきたはずだと思ったのだが。

また、亡くなった人たちのことを綴った文が多いようにも思った。その中に志ん朝や小さんの名前が出てくるのもちょっとした驚きだった。高井氏が落語に関心を持っていたのは初めて知った。

僕は高井有一の小説の静かな語り口が好きだった。雨の一日、周りの音が遮られた部屋の中にでもいるような、ひんやりした静けさがことのほか好きだった。

もうずっと前のことだが、僕は秋田の近代美術館で高井有一氏の講演を聞いたことがあった。美術評論家の高階秀爾氏が司会を務め、高井氏は郷里出身の画家平福百穂や、ご自身の祖父田口掬汀のことを語ったのだったが、温和な表情で静かに、予定の一時間半を寸分違わず律儀に纏めあげた講演を、この随筆集を読みながら思い出していた。

高井有一『時のながめ』(新潮社、2015)

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