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2009年1月の6件の記事

堀江敏幸『未見坂』

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相変わらず堀江敏幸を読んでいます。これは去年出版された短篇集で、初出は 2004 年 6 月号から 2008 年冬号までの『新潮』『すばる』『群像』『考える人』。

帯に「『雪沼とその周辺』に続く待望の連作短篇集」と記されているように、やはり、ある架空の地域、春片に暮らす人びとの生活が淡々と綴られています。特別大きな出来事が起こるわけでもなく、地域の商店主や子どもの目を通してその暮らしが静かに語られているのも前作と同じです。

このような静かな短篇に共通しているのが消え入るように余韻を残した終わり方で、たとえばこんな具合です。

『苦い手』母の顔も、父が亡くなった日のように、マグカップで隠れるくらいに縮んで見えた。

『方向指示』あ、と修子さんはあわてて振り返り、現実の窓から外の世界を見やったが、自転車もひとも白っぽい球のような靄を残して、あとかたもなく消えていた。

シベリウスの曲やマイルズ・デイヴィスの『カインド・オヴ・ブルー』を思わせる終わり方だなあ。

雪沼や春片を舞台にした短篇をポツリポツリと発表している堀江敏幸の姿は、いろいろな長篇や短篇の合間に、ヴァーミリオン・サンズでの短篇を不定期に発表してきた J・G・バラードを思わせます。

堀江敏幸『未見坂』(新潮社、2008)

滑走路へ
苦い手
なつめ球
方向指示
戸の池一丁目
プリン
消毒液
未見坂
トンネルのおじさん

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井の頭の串田家

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『週刊文春』1 月 29 日号を読んでいたら、連載の「新 家の履歴書」に俳優の串田和美さんが載っていました。

串田和美さんは巣鴨に生まれ、山形に疎開し、巣鴨の家が戦災で失われて井の頭に移り、小金井に転居したのですが、いちばん思い出深いのが四歳から中学三年まで住んだ井の頭の家だったとのこと。

この井の頭の家が、屋根を取り除いた形で俯瞰されたイラストが載っています。離れのように突き出た部屋がお父さんである串田孫一さんの書斎で、「壁は全て本棚だった」と記されています。お父さんはここで書き物をしたり、絵を描いたりしていたそうです。

和美さんは、若い時は反発していたけれど、今になって父親の影響を感じ、井の頭にあったこの家の近くに住みたいと思うようになったと言っています。

今、北海道の斜里にある「北のアルプ美術館」に串田孫一さんの書斎を再現しようと準備しているのは小金井の家のものだそうです。

僕は筑摩書房から出た全集を持っている串田孫一ファンなのですが、書斎が完成したら、斜里の美術館に行ってみたいなあと思っています。

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ヴィヴァルディ:フルート協奏曲集

Conceriperflauto

ヴィヴァルディのフルート協奏曲作品 10 は 1728 年頃にトラヴェルソと弦楽合奏という編成でアムステルダムで出版されたのですが、第四番を例外として、すべてに多様な編成の原曲が存在し、その自筆譜や書写譜はトリーノ国立図書館に所蔵されているとのことです。ヴィヴァルディ自身がこれらの協奏曲を作曲し始めたのは 1703 年以降のことだったそうです。

フランス・ブリュッヘンの解説によると、オリジナル版がのびやかで快い田園風の魅力を放射しているのに対して、アムステルダム版は管のパートがとりすました弦の合奏に置き換えられてヴィオラのパートが付け加えられた結果、なんとも締まりがなく、非音楽的なものになっているとのこと。そして、このアムステルダム版はヴィヴァルディ自身の指示を得ないままに勝手に手を入れたものだろうと結論づけています。

ですから、ブリュッヘンたちは当然のごとくオリジナル版を使って生き生きとした演奏を残しています。特に、第一番の『海の嵐』などからはハッとするようなスリルを感じます。

6fluteconcertos

じゃ、対するアムステルダム版はどうなのかなと思って、図書館から借りてきたのがパトリック・ガロワとオルフェウス室内管弦楽団の盤なのですが、弦楽器の編成を小さくしてスッキリした演奏になっているあたり、こちらはこちらでなかなか良いもんだなあと、お気楽なリスナーの僕はそう感じるのでした。

ヴィオラ・パート? それはもう専門の方におまかせします。


Antonio Vivaldi (1678-1741) : Concerti per Flauto, archie cembalo op.10 (SEON)

Concerto Nr.1 F-dur "Tempesta di mare"
Concerto Nr.2 g-moll "La notte"
Concerto Nr.3 D-dur "del gardellino"
Concerto Nr.4 G-dur
Concerto Nr.5 F-dur
Concerto Nr.6 G-dur

Frans Brüggen, Blockflöte,Traversflöte
Lucy van Dael, Barockvioline, Barockviola
François Fernandez, Barockvioline
Staas Swierstra, Barockviola
Danny Bond, Fagott
Anner Bylsma, Barockviloncello
Bruce Haynes, Barockoboe
Nicolas Pap, Violone
Bob van Asperen, Cembalo continuo, Orgel continuo
Jan., 1979, Netherlands

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薄型テレビが来た

Kdl32je1 テレビを買い替えました。なにしろ今まで見ていたのが 1987 年の製品だったから、もう 21 年間も使っていたことになります。

それでも別に買い替える必要は感じていなかったのですが、正月に帰省した息子が言うには「テレビ、ちょっと赤いんじゃないか」とのこと。なるほど、そう言われてみればたしかに赤っぽい感じがします。色調整をやってみましたが、どんどん汚い色になっていくばかり。気になり出すと、もう気持ちが悪くてしょうがないです。

ま、そういえば、たしかに不便なこともありました。衛星放送を見るとき、DVD レコーダに内蔵のデジタル BS チューナで受信してテレビのビデオ端子に入れると、ベルナール・ビュフェの絵のように、人がみんなひょろ長くなってしまうのです。古いテレビなのでアスペクト比を切り替えることができないのです。

そこで、まず VHS ビデオ・レコーダ内蔵のアナログ BS チューナで受信し、いったん DVD レコーダに入れてからさらにテレビに入れる必要があったのです。つまり、衛星放送を見るためには、テレビと DVD レコーダと VHS ビデオ・レコーダの三台の電源を入れなければならないのでした。

こんなことがあったので、さっそく家電屋さんに行ってテレビを選んできて、先ほど取り付けが終わりました。店内では大きさを感じなかったけれど、ウチの中ではバカバカしくでかいです。

新しいテレビはきれいな色で映りました。今までのテレビとは見違えるようです。アナログ BS で録りためた DVD もまずまずの画質です。

今までのテレビを 21 年間使ってきたとなると、この新しい機種が僕の人生で最後のものになるのかなあ、なんて考えてしまいますね。

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ズート・シムズ:ダウン・ホーム

Downhome

このアルバムを解説した岡崎正通さんによると、ズート・シムズの代表作にはワン・ホーン、つまり彼のテナー・サックスにピアノ、ベース、ドラムスのリズム・セクションというクァルテットのレコードが多く、これらに彼の個性が最もよく出ているとのことです。

これにはまったく同感です。たしかに、淀みなく流れるように歌うシムズの個性はよけいな仕掛けのないシンプルなコンボの演奏によく表れていると思います。これはスタン・ゲッツなども同様です。

ゲッツと比較されることの多いシムズですが、彼はゲッツよりももっと伝統的なスタイルを持っています。そして、その演奏は好不調の波を感じさせない安定したものです。

このアルバムでは、カウント・ベイシー・オーケストラが 1930 年代後半にデッカ・レーベルに残した Jive at Five、Doggin' Around やスイング時代によく演奏された Avalon などを取り上げています。スモール・コンボでこのようなスイング時代の曲を演奏するというと、僕らはいわゆる中間派のジャズが持っていた雰囲気を思い浮かべるのですが、シムズの演奏はさすがに緊張感を保ったモダン・ジャズになっているあたり、なかなか興味深いです。

僕はシムズのレコードをほかにワン・ホーン・クァルテットで一枚、アル・コーンとの双頭コンボで一枚、ほかにはジェリー・マリガンのセクステットとオーケストラでそれぞれ一枚とこれだけしか持っていないのですが、彼の演奏を聴いていると、ジャズ界でも抜きん出たインプロヴァイザーの一人だという感を強くします。もう少し集めてみようかなと思っています。

The Great Zoot Sims "Down Home" (Bethlehem)

Jive at Five
Doggin' Around
Avalon
I Cried for You
Bill Bailey
Goodnight, Sweetheart
There'll Be Some Changes Made
I've Heard That Blues Before

Zoot Sims (tenor sax)
Dave McKenna (piano)
George Tucker (bass)
Dannie Richmond (drums)
Jul., 1960, NYC

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秋田の県民性

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1 月 1 日付けの毎日新聞秋田版に「あきた県民性あれこれ」という特集記事が載っていました。

この記事に書かれているように、秋田の県民性は「しょしがり(恥ずかしがり)」で「ひやみこき(怠け者)」だが「えふりこき(見えっ張り)」。この三つは地元民にとってだれでも心当たりがあるものです。

ところが、秋田大学の日高水穂さんは方言学の立場からこう述べています。

「えふりこき」「ひやみこき」といった方言は、むしろこうした性格をよしとしない地域社会が秋田にあることを示している。メディアが秋田の問題を取 り上げる際、わかりやすい理由を求めたり、特殊性を強調するあまりこのように報じ、県民の側もそう認識し、納得してしまったところがある。

日高さんは何年か前にも同様のことをほかの新聞で述べていたのですが、地元に生まれ育った僕らには、新年早々、ま、そんなに悪くはないかと思わせてくれる言葉でした。

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