野谷文昭編『日本の作家が語る「ボルヘスとわたし」』

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僕がボルヘスを何とか最後まで読んだのはビオイ=カサーレスとの共著『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』だけで、あとはみな途中で訳がわからなくなって投げ出したものばかりです。それに、読み終えた『六つの難事件』でさえ充実感にはほど遠い印象なのです。迷宮という言葉とともに語られる彼の小説世界のなんと複雑で難解なことか。

『日本の作家が語る「ボルヘスとわたし」』は 10 人の作家がボルヘスをどのように読んだか、彼らの講演をまとめた一冊です。

まず初めに、

ボルヘスの一つの短い物語なり、散文詩なりは、それ一つを見るだけで、結局ボルヘス全体に当たるものがよくわかる。

というのが出てきます。ここで僕はフラクタルを思い浮かべ、一つの断片がその全体と相似であるような物語とはどんなものだろうと考えるのです。なるほど、いちど入り込んだら抜け出せない迷宮に違いない。

それから、『円環と廃墟』から、

「夢みる男の夢の中で、夢みられた男がめざめた」

という言葉が引用され、解説されています。この入れ子構造の言葉から、僕はずっと昔にプログラミング言語の Pascal を独習していたとき、再帰的関数を定義する箇所にぶつかって、この習得をあきらめたことを思い出します。

あるものを定義するとき、その中に自らを呼び出すという考え方は、それまでのものと次元を異にします。GNU is Not UNIX などという言葉になじんだ若い世代にはどうかわかりませんが。

つまり、ボルヘスの作風は僕にとって最も苦手なものだと、この本を読んでわかったのでした。

『日本の作家が語る「ボルヘスとわたし」』(岩波書店、2011)

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