2017年9月20日 (水)

原田治『ぼくの美術ノート』

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原田治の『ぼくの美術ノート』を読んだ。

イラストレーターの原田治は雑誌「アンアン」の創刊号から活動し、とても有名な存在だったという。でも僕は、彼の著書『ぼくの美術帖』がみすず書房の叢書「大人の本棚」に収められていたことで、初めてその名前を知った。女性雑誌を読む習慣などないから当然のことかもしれない。

『ぼくの美術ノート』は雑誌「芸術新潮」に連載されたコラムを纏めたもの。古今東西の画家、写真家、漫画家たちを取り上げている。

まず、詩人であり、グラフィック・デザイナー、イラストレーターでもあった北園克衛。前書きに『美術帖』と同様、北園の言葉を引用している。

「美」とは本来 無価値なものである
風景や空の雲が無価値であるというような意味において

北園が晩年、エラリー・クイーンの推理小説のカバーをデザインした中から『緋文字』が取り上げられている。鮮やかな緋色の円形を不安定な位置に置くことで、人妻の困惑が連想され、やがて起こる殺人事件の血の色が想起される。

次に小村雪岱。著者は雪岱をことのほか評価していたようだ。本書でも木版画、新聞小説の挿絵のほか、歌舞伎の舞台装置や美術考証、さらには映画の美術まで、多岐にわたる仕事を繰り返し紹介している。

さらに、映画の衣装デザイナー、イーデス・ヘッド。彼女が手がけた数多い作品の中からヒッチコック監督の『裏窓』。物語の進行を、グレース・ケリーの衣装を変化させることで視覚表現する鮮やかさ。

原田治は 2016 年に亡くなったのだが、その直前まで続けていたブログ原田治ノートがまだ読めるようになっている。

原田治『ぼくの美術ノート』(亜紀書房、2017)

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