2017年8月 8日 (火)

カーソン・マッカラーズ『心は孤独な狩人』

Photo

カーソン・マッカラーズの処女作『心は孤独な狩人』を読んだ。

マッカラーズの小説は村上春樹の新訳『結婚式のメンバー』を除けば現在すべて絶版になっているが、『心は孤独な狩人』だけはなぜか電子書籍版が出ている。訳者は河野一郎となっているので、新潮文庫と同じ内容のようだ。

物語は少女ミックを中心に、同性愛者と思しき二人の聾唖者、カフェの主人、黒人医師、革命を夢想する男などによって展開される。ここでのミックは作者マッカラーズの分身と考えられる。

物語について訳者の河野一郎は、マッカラーズが出版社に書き送り創作奨学金を得たというこの作品の青写真に当たる資料を引用して、次のように解説している。

五人の孤独な魂の渇きと挫折が、均衡のとれた綿密なプランに従って「対位法的に組み立てられて」いる。(中略)「遁走曲(フーガ)におけるそれぞれの声部のように、主な登場人物は一人ひとりが完全なものであるが−−−−他の人物と対比され、編み合わされて、新しい豊かさを持つ」ように配置されているのだ。

物語の構造を音楽に喩えているのは、マッカラーズ自身がコンサート・ピアニストになる夢を持っていたことと切り離せないが、他のどのような解説にも増してこの小説の特徴と魅力を捉えていると思う。

カーソン・マッカラーズ/河野一郎訳『心は孤独な狩人』(グーテンベルク 21、2016)

«ブルー・ミッチェル『ブルーズ・ムーズ』

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31